|
本講座は、経営に関する情報システムの各種モデルを開発するための技術、ニーズ分析と評価に基づく経営情報システムの設計・構築に関するマネージメント技法、コンピュータ・通信ネットワークを駆使した経営情報システムの運用・管理のための方法論に関する研究を行っている。具体的には、複雑性・変動性を有するシステムの柔軟な分析や構築法、人間中心思考のシステム分析・評価法、人間の知能に学ぶ高度情報処理メカニズムの実現法、高品位の情報伝達を効率的に行う通信システム技法、Webアプリケーション構築環境の開発などに焦点を当てた経営情報システムの基盤技術の開発を進め、それらを踏まえて医療・福祉、生活、ビジネス活動、生産活動、社会安全などの分野における経営情報システムの高度化にアプローチしている
1.システム工学
1.1 生産システム工学
経営情報システムの人間的側面、価値的側面、技術的側面に着目し、プロジェクト組織管理、新製品開発・ソリューション、生産計画・スケジューリング管理におけるシステム最適化の方法論研究を行っている。
1.2 ファジィシステム工学
主観的なあいまいさ(ファジィネス)を含む推論システムの数理モデル化、不確かな環境下における意思決定システムに関する研究開発を行っている。
1.3 ロボットシステム工学
非平滑路面・凹凸床面においても安定に走行可能な「対地適応性の高い作業移動型ロボット」の開発研究を行っている。従来の車輪型・クローラ型・歩行型の移動方式とは異なる新たな移動方式として斜毛駆動型移動方式を採用し、重量物可搬性に優れた移動体の開発を進めている。これを、埋設地雷に感知することなく地雷原を安全に走行移動できる「人道的地雷除去のための地雷原走行用作業移動プラットフォームの開発」に適用し、その実現を図っている。
|
1.4 計測システム工学
観測量(結果)から計測量(原因)へ至る逆因果過程としての計測過程を実現するための計測システム構成論の研究を中心に、従来は計測不可能であった対象を計測するための新しい計測システムの開発を行っている。応用例として、外界認識のための人工感覚毛の開発を進めている。可変抵抗ゴム(外径3mm、内径1.5mmのチューブ型)や薄板(厚さ0.3mm、幅5.0mm、長さ225mm)をセンシング素材とした人工感覚毛により、先端に触れた物体の大きさ、物体までの距離等の外界情報を、電気抵抗変化やひずみ発生によって感知する受動型触覚センサの開発を行い、これを外界認知センサに応用する研究を行っている。
|
(大里) |
2.人間生活システム工学
2.1 生活者の心理・行動特性の計測・理解
社会生活を営む人間の心理・行動に係わる諸特性を様々な環境要因と相互作用しあうシステムの特性としてとらえ、計測、分析、モデル化する手法を構成する。
研究テーマ「非言語ヒューマンインタフェースのための身振り表現の計測・理解」では、コンピュータタスク場面で発現する自然なしぐさを、被験者実験を通して計測・分析し、その動作特徴と意味との対応を理解する仕組みの構成を図る。これまで、疲労、思考、確認、集中、意欲に関係する操作者の感情・意図を表現するマクロな動作特徴がとらえられ、ヒューマンインタフェースへの展開可能性が明らかになった。
研究テーマ「居住空間での実生活行動の計測・理解」では、分散配置した多元センサモジュールからのデータの融合で、生活行動状態を推測する知的センシングシステムの開発を行ってきた。多元データの融合法としての学習的ショケ積分エージェントネット(CHIAN)法の有効性と限界を、長時間の実験住宅での模擬生活行動実験に基づいて検討した。人体センサ情報から空間行動の基本様態が把握され、音と光情報の加味により、モノへの働きかけ行動の把握可能性が示された。
2.2 生活者適合の生活行動支援システムの構築
人間の日常生活場面での諸行動を、より効果的に行うには、個々の生活者や家族の心身特性や生活特性に合った行動支援を行う知的システムを導入したい。
研究テーマ「生活行動適合型の住生活支援・評価システム」では、各生活者の生活様態に応じて、その生活者固有のアメニティ向上策を探索・評価するシステム分析法を提案し、キッチンのリフォーム案を各ユーザの調理行動スタイルに合わせて評価する方法に展開した(図2)。また、避難所の生活様態を踏まえた心的負担軽減のための空間活用法の基礎的検討を行った。
なお、これら生活行動計測・支援システムの研究は、平成11年度〜13年度のNEDO委託研究プロジェクト「人間行動適合型生活環境創出システム技術」の再委託研究を展開する形で進めている。
|
|
(中村) |
3.医療情報学
3.1 簡易型疲労度測定手法の開発と仮想現実環境への応用
平成8〜10年度のNEDO委託研究 創造的産業技術研究開発促進事業「生活アメニティのための知的計測・分析技術の研究(家庭生活アメニティのための計測・分析技術)」の一部として、住生活状況での多元的生体情報センシング法としての統合化システム「ロボットハウス」を提案し、その具体的な生体情報収集システムについて重心動揺計を用いたアメニティを有する疲労度測定手法の開発を行なった。その成果として簡易型の疲労度測定手法の確立や仮想現実影響度測定装置への応用などが進展した。
具体的には、三宅 仁:仮想現実と健康―ポケモン騒動の教訓―、日本機械学会誌104(997)、12/13、2001において、いわゆるポケモン騒動に見られたように仮想的な視覚刺激であっても、十分に生体に影響を与えることがあることを示した。これは平成13年度修士論文、児玉裕俊「重心動揺計測によるVR評価の研究」平成14年度修士論文、宝田 潤「視覚刺激による姿勢制御系影響評価システムの研究」の成果のエッセンスである。平成15年度からは懸案の寝たきり予防策として、転倒がハイリスク(重心動揺大)であることを簡単に認知させうるシステムの開発を目指し、より簡便な計測を可能とするための新たな方法論の開発を行っている。
3.2 医療情報システムの開発
平成12年度からPCベースRDBMSによる健康診断システムの構築を行っているが、平成14年度からは樋口講師との共同研究、経営情報システム工学課程の学生実験として、さらに平成15年度からは卒業研究としても取り組んでいる。
以上の研究に関連する研究成果として平成13、14年度は、学会発表17件を行なった。(体育・保健センター保健部門参照)
|
(三宅) |
4.知能情報処理と知的ヒューマンインタフェース
4.1 不確実な因果知識による推論と学習
知能情報処理では様々な知識と推論を用いるが、異常診断や各種解析などの分析型問題解決において、人間が最もよく利用する知識の一つが因果関係である。因果関係を用いて行う推論には、1)観測された原因から結果を求める演繹推論、2)観測された結果から原因を求めるアブダクション(発想的推論)、3)既知の原因・結果から未知の原因・結果を求める混合推論の3種類に大別される。また、我々が持つ因果関係知識は多くの場合以下の2種類のあいまいさを含む。
・不確実性:事象が起きるか否かのあいまいさ。
・強度:どの程度の強さで起きるかのあいまいさ。
そこで、本研究室では上記2種類のあいまいさを含む因果関係知識を用いて前述の3種類の推論を行う方法について研究を行っている。あいまいさの表現には古くから使われている確率でなく、定性的性格を持ち、無知量を扱うことの可能な可能性理論を用いる。
また、原因と結果の生起に関する事例データがあるとき、それらのデータから上述の推論で用いるあいまいな因果関係知識を学習する方法についても研究を行っている。
4.2 知的ヒューマンインタフェース
(1)Push like talking
電子機器の情報化・小型化・多機能化が顕著であるが、それと共に操作が急激に複雑化し、いまやマニュアルなしにそれらの機器を使いこなすのは不可能に近い。この研究では、人間同士の対話を機械操作のメタファとする新しいヒューマン・インタフェース・パラダイムPush
like talkingを提案する。Push like talkingでは、ユーザはあらかじめ吟味・選択された単語を表すボタンを押して機器に自分の目的を伝える。自分の意図を言葉にするとき複数の表現があるように、Push
like talkingでは一つの目的の表現がただ一つのボタン操作手順であるとはしない。ボタン操作によって発話した単語からユーザの意図を推論し、実行すべき機能を決める。ユーザ意図の推論には、前述の因果関係知識による推論を用いる。
(2)高齢者に対するマウス操作支援
コンピュータの入力装置として最も普及しているマウスは高い認知能力と手指の制御能力を必要とし、これらの能力が衰えた高齢者にとって使いやすい装置ではない。また専用装置の開発はコスト的、商業的に非現実的である。そこでソフトウエア的に高齢者のマウス操作を支援する方法の研究を行っている。
|
(山田) |
5.Multimedia Signal Processing
The recent growth of data intensive multimedia based web
applications sustained the need for more efficient ways to encode signals and
images and made the compression of signals and images central to communication
technology. Over the past years we have proposed powerful and sophisticated
wavelet based for image compression.
The techniques used for signal feature detection are of
major importance in present high quality audio coders. We have proposed a new
and efficient method to capture the time varying spectral content of
non-stationary signals.
De-noising of signals plays an important role in most
communication applications. Recently, we have proposed an enhancement of
signals in the presence of interference. We have also provided new insights
into the quality of received data in transmission of highly compressed
multimedia data in the presence of channel noise.
More information about our research interests and results
can be found in the following papers:
|
[1] |
P. Zavarsky et al, "Entropy Based Adaptive Median Filtering", Proceedings of the 4th European Workshop on Image Analysis for Multimedia Interactive Services WIAMIS 2003 in London, United Kingdom, April 10-11, 2003. |
|
[2] |
P. Zavarsky et al, "Angular Multichannel Sigma Filter", Proceedings of the 28th IEEE International Conference on Acoustic, Speech & Signal Processing ICASSP 2003 in Hong-Kong, Hong-Kong, April 6-10, 2003. |
|
[3] |
P. Zavarsky et al, ""Noisy heart sequences filtering by optimal median based operators", Proceedings of the 5th IFAC Symposium on Modeling and Control in Biomedical Systems, Melbourne, Australia, August 2003. |
|
(Pavol Zavarsky) |
6.IT・システムリスク・マネジメント
6.1 金融機関におけるIT・システムリスク・マネジメントの必要性
現代社会において、通信・交通・金融・電力などの社会生活の基盤(社会インフラ)は、すでに広範にわたって電子化されており、商取引の電子化や電子政府も導入されつつある。一方この間、IT・システムへの依存性も急速に増加しており、システムの複雑化・肥大化・老朽化といった要因から、現行の経営体制ではコントロールしきれずに、IT・システム関連の障害・不具合から社会インフラの継続性が中断されるような事故が散見されるようになった。特に業務のIT・システム化を業界挙げて推進してきた銀行業界は、決済という社会経済活動に不可欠な業務を維持するために、経営環境が決して良好とは言えない環境下においても、IT・システムの可用性(availability)、安定性、安全性、堅牢性の維持に多大な労力を費やしている。
本研究室ではこのような銀行ビジネスにおけるIT・システムリスクを、最近頻発している電子的な犯罪やテロなどの要因も含めた定義を行い、その計量化も含めた管理方法の構築に関わる研究を進めている。
6.2 経営上の意思決定プロセスへの反映
管理方法の構築に加え、さらにマネジメントを目的とした意思決定のプロセスの構築と、意思決定支援のための経営情報システムの概要に関する考察を展開しているが、その過程において、銀行業務や決定レベルの階層分けを行いながら考察を進めると同時に、銀行業務の中でもIT・システム依存性の高い商品・サービスや業務形態を分析し、そのリスクを整理しながら、実効性の高い意思決定支援を可能とする経営情報システム概要の定義も進めている。
|
|
(渡辺) |
7.スポーツギアの開発プロセスの構築とPL法
7.1 スポーツギア(製品)開発プロセスの構築
経営情報学的視点からスポーツギア(製品)開発のためのプロセスを、それぞれのギア毎に構築し、開発されたギアの評価をとおして、開発プロセス自体の検討を行っている。スポーツギアではまずどのようなギアを開発するかというコンセプトデザイン(概念設計)が行われる。次に実際にギアが使用される現場での調査が行われ、目的(コンセプト)に対する問題点を明確とする。そしてこの問題点に基づいて、ギアの改良あるいは新規開発が行われる。さらにヒトが使うという観点にたち、マン−マシン・インターフェースを考慮してギアの評価を行い、さらにここで問題が生じた場合は改良が加えられる。こういったプロセスを繰り返すことで、より適用性の高いプロセスの構築が行われる。
こういったスポーツギア開発のプロセスを、実際のギアのコンセプトデザインおよびいくつかの計測装置を組み合わせた評価実験から構築・検討していく。
これまでコンセプトデザインという点ではCADを用いて、バリアフリーも念頭においたトレーニングプレイスとして、屋内の階段をスロープに転換するという研究を行ってきた。また、ギアの評価という点では、振動計測やヒトの動作解析によって、テニスラケットやスキーを対象に行っている。
|
7.2 スポーツギアとPL法
ヒトが直接的に使用するという点から、スポーツギアはPL(製造物責任)法の対象になりやすい。事実、多くのスポーツ関連企業においてPL対策室が設けられている。ここではギアを使用することに関連して派生した製造物責任問題を調査し、この結果に基づいてどのようなギアを開発・製造してはいけないかを工学的に検討している。
|
(塩野谷) |
8.Webアプリケーション構築支援システム
8.1 背景
インターネットの普及とともに、多くの分野でWebアプリケーションが利用されている。しかし、Webアプリケーションを利用するためには、ハードウェアおよびソフトウェアに関する技術が必要不可欠であり、現状では、特定の条件を満足する利用者のみが、既存のWebアプリケーションを購入して、そこに組み込まれた機能を利用するにとどまっている。
このような問題を解決し、インターネット環境の有効な活用を進めるためには、誰でも簡単にWebアプリケーションを構築・利用できるような支援システムが必要である。
8.2 原理
Webアプリケーションは、その性質上、データの処理よりもデータの共有に重点が置かれている。そのため、Webアプリケーションプログラム全体のかなりの部分は、様々なWebアプリケーションで共有することができる。一方、各Webアプリケーション固有の部分は、別途プログラムを作成する必要があるが、いったん作成したプログラム自体を再利用できるようにすることにより、構築可能なWebアプリケーションの範囲は拡大する。
このように、データだけでなく、ロジック自体の共有をはかることにより、Webアプリケーションの構築をより容易に行えると考えられる。
8.3 今後の予定
基本的な方針としては、データだけでなくロジックも共有するという性質上、このシステム自体も1つのWebアプリケーションとして構築する予定である。
|
(吉田) |
(以上 2003年度版 長岡技術科学大学 研究レビューより)