講義ノート
  電子政府論

ヒット カウンタ
since 2002/07/18

目次
  1. 電子政府とは:定義とスコープ
    【電子政府を体験してみよう】

  2. 電子政府への歩み

  3. 電子申請・届出・証明

  4. 電子調達・電子入札

  5. 電子納税

  6. 登記制度

  7. 電子投票

  8. 住民基本台帳ネットワーク

  1. 共通課題

  2. 印鑑から電子署名・電子認証へ

  3. サイバーロー

【演習問題】

【脚注】

【参考サイト】

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1.電子政府とは:定義とスコープ

幾つかの定義

  • 経済構造の変革と創造のための行動計画(1997年5月閣議決定)

行政の情報化は、情報通信技術の成果の活用とこれに併せた旧来の制度・慣行の見直しを通じ、行政の事務・事業・組織を通じるシステムを変革し、行政サービスの飛躍的向上や行政内部のコミュニケーションの円滑化、政策決定の迅速化・高度化等行政運営の質的向上を実現しようとするものである。かかる行政の情報化を強力に推進し、21世紀の初頭に、申請、届出、調達、情報提供等政府と国民・民間企業とのインターフェースが電子化された「電子政府」の実現を目指す

  • ドン・タプスコット、「デジタル・エコノミー」、野村総合研究所訳

世界中で公共セクターは包囲攻撃を受けている。あらゆるところで、納税者はよりよく、しかもコストのかからない政府を求めている。メッセージは簡潔である−「今のシステムをいじくり回すだけでは不十分だ」。必要とされているのは、根底から政府を発明し直すことである。政府の政策はネットを通じて電子的に提供されることで、質を高め、コストを引き下げることができる。政府情報へのアクセスが容易になり、開かれた政府を作り上げる道を開く。仮想部門を設立し多くの機関の業務を統合することによっ、市民へのサービス提供窓口を一本化することもできる。官僚主義はネットワーキングによって水平なものへと変身する。

  • これらの定義におけるポイントは?

 
 
 

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電子政府論のスコープ

  • 電子政府論で取り扱う領域を図示すると下図の色の領域のようになります。この表では、行動を起こす側を縦軸に、受ける側を横軸に並べてみましたが、この区別は相対的なものですから、対角線に対して対称的な構造をしていると考えても良いでしょう。

 

B(企業)

C(個人)

G(政府)

B

B2B取引
(商流・金流・物流)

情報共有

B2C取引

マーケッティング

企業情報開示

申請・登録・証明

C

消費者相談

オークション

P2P

情報共有

申請・登録・証明

情報公開請求

各種相談業務

G

調達・入札

 

徴税(納税)

電子投票

パブリックコメント

文書管理

アーカイブ

情報共有


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【電子政府を体験してみよう】

世界の先進的ワンストップ政府窓口


米国連邦政府


シンガポール政府


香港政府(英文窓口)

 

世界の電子政府関連サイトへのリンク
URL: http://www.egovlinks.com/world_egov_links.html


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.電子政府への歩み:日米比較

  • 電子計算機導入の歩み

いずれの国においても、政府部門は最も早くから情報処理システムの利用を進めてきた部門であり、また、単一の組織としては最大の電子計算機システムのユーザでしょう。国防部門まで考慮すればその歴史は更に遡ることができ、むしろ、政府部門こそが電子計算機の開発を先導してきたということができます。

日本では1959年に気象庁が気象予測用に電子計算機を導入したのが第一号と言われますが、1960年代以降、社会保険、税務、統計調査、各種申請業務など、様々な政府機関の業務で電子計算機システムの導入が進み、現在では全く電子計算機システムの手を借りない業務はないと言ってもよい段階にあります。

■日本の行政機関におけるコンピュータの導入状況

  • 電子政府実現

まず情報化政策全般については、1993年に成立した「高度情報通信社会推進本部」のもとで

  • 米国の行政評価法(GPRA)

どのような組織であれマネージメントの基本は、「計画」(plan)→「行動」(do)→「評価」(see)のサイクルです。しかしながら、政府組織の場合、企業組織と異なり、これまでこうしたマネージメントのサイクルが十分自覚されてきませんでした。

電子政府の目的は単に政府の業務を電子化することではありません。電子化によっていかに政府の機能が高度化したのか、という観点からその成功の度合いが測られるべきです。その意味で、電子政府の歩みは政府のパーフォーマンス(業績)の評価ということと密接に関連しています。

米国では1993年に行政評価法(GPRA: Government Performance and Result Act)が成立し、連邦政府の各部局は数年間を単位とする戦略計画(strategic plan)をたて、また定期的にそのパーフォーマンスを具体的な指標によって自己評価する、ということが義務付けられることになりました。

  • 米国のペーパーワークの削減法

こうした中で、米国ではクリントン政権時代の1995年に連邦政府各機関におけるペーパーワークの削減を義務付ける「ペーパーワーク削減法」(Paperwork Reduction Act of 1995)が成立しました。そして3年後の1998年にはこれを一層徹底した「政府ペーパーワーク撤廃法」(Government Paperwork Elimination Act)が成立しました。これは、法律発効後5年以内(つまり2003年10月まで)に全ての政府機関の長は電子的方法による情報の提出、管理、開示オプションを用意し、電子署名を受理できるように準備しなければならない(sec.1704)とした法律であり[1]、日米両国の政府部門における電子計算機導入の歩みを年表にしたものが「電子政府:日米比較年表」です。

  • 米国の電子情報自由法(EFOIA)

米国において電子政府実現への大きな推進力を作り出したもう一つの要因は、1996年に成立した「電子情報自由法」(Electronic Freedom of Information Act)です。

そもそも"Freedom of Information"というのは、「政府の保有する情報に対する国民のアクセス権」を意味する概念であり、"Freedom of Press"(出版の自由)、"Freedom of Speech"(言論の自由)等と並ぶ国民の基本的権利として確立された概念です。米国では1966年に成立したFreedom of Information Actによって始めて明文上の規定が与えられました。この法律は「情報自由法」あるいは「情報公開法」とも訳され、また、略して"FOIA"と呼ばれます[2]。そして、情報自由法成立から30年後の1996年に成立した「電子情報自由法」は、この情報自由法の電子版であり、国民が電子的な手段を用いて政府の保有する情報に対する自由なアクセス権を有するということを明らかにした法律です。法律案への署名後、当時のクリントン大統領は

「我々の国はOpennessとAccountabilityという民主的な原理に基づいて建国され、そして30年間、FOIAはこれらの原理を支え続けてきた。今日、1996年電子情報自由法(EFOIA)は、米国政府と米国民の間の重要なリンクを改善するのである」

との声明を発表したそうです。

この法律の成立によって、全ての連邦政府機関は電子的な手段によるものを含めて、国民からの情報公開請求に対して対応することが義務付けられたのです。米国政府におけるウェブページ上での情報公開が著しく加速されたのはこの法律が極めて大きな推進力となりました。

  • 日本における政策評価法と情報公開法

日本においても米国と同様の枠組みが、少し遅れながらではありますが成立しています。

情報公開に関しては、1999年に「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が成立し、2001年4月から施行されました。

そして政策評価制度に関しては、

1) 効率的で質の高い行政の実現

2) 成果重視の行政への転換

3) 国民に対する行政の説明責任の徹底

のため、中央省庁等改革の大きな柱の一つとして、2001年1月から全政府的に導入され、同年6月には「行政機関が行う政策の評価に関する法律」が成立して2002年4月1日から施行されています。

 

日米両国における電子政府関連の動き

日本 米国
1990    
1991    
1992    
1993 高度情報通信社会推進本部設置 行政評価法(GPRA)
1994 行政情報化推進基本計画  
1995   ペーパーワーク削減法
1996   電子情報自由法(EFOIA)
1997    
1998   政府ペーパーワーク撤廃法
1999 「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」成立 E-Govに関する大統領メモ
2000    
2001 中央省庁改革実施。政策評価制度導入。「行政機関が行う政策の評価に関する法律」成立  
2002    
2003    
詳しくは、三上の「電子政府:日米比較年表」を参照。日本の関連政策についての詳しい情報は、首相官邸のIT戦略本部、総務省の「情報公開」、「政策評価」、「行政情報化」に関するホームページなどを参照。

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3.電子申請・届出・証明

  • 電子計算機導入の歩み

テムの手を借りない業務はないと言ってもよい段階にあります。

日米両国の政府部門における電子計算機導入の歩みを年表にしたものが「行政情報化の歩み(年表)」です。

■申請・届出手続の電子化状況

  • 手続数で2,670/8,822が電子化完了(1998年度末)というが・・・


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4.電子調達・電子入札

中央省庁と地方自治体をあわせて、政府による物品・サービスや工事の調達額は巨額に達します。国の一般会計における公共事業だけでも毎年8兆円に達し、公共事業以外の様々な調達、地方自治体の公共事業や物品調達をあわせれば、その額は毎年30兆円程度に達するものと思われます。これはGDPの〓%に及びます。そして、これを如何にして透明性高く、効率的に行うシステムを構築できるかが電子調達・電子入札導入の課題です。

 

事例(1):横須賀市

横須賀市は全国の自治体の中でも、情報技術の活用において先進的な自治体として知られています。1999年の「日経インターネットアワード」では、自治体・教育部門で「地域活性化センター賞」を受賞しています。また、独創的なアイデアや先進的な住民参加などで、一歩進んだ地域作りに取り組んでいる市区町村を表彰する「毎日・地方自治大賞」の2001年度選考では、「IT」と「循環型社会」が審査ポイントとなり、「全国に先駆けて電子入札制度を導入し、入札の透明化を図って談合を防ぎ、コスト減にもつなげている」として横須賀市に特別賞が贈られています

事例(2):国土交通省のCALS/EC

国土交通省では、公共事業の入札及び契約のプロセスを透明にするために、『公共工事の入札及び適正化の促進に関する法律』の制定を行い、制度面や事務手続き面での準備を完了し、現在、インターネットを利用した電子入札の導入・普及を推進しています。2003年までに国土交通省が発注する全公共事業を電子入札化するとともに、2010年までに地方公共団体を含めた全公共事業を電子入札化する計画です。

公共事業に関しては、インターネットを通じた入札広告に関わる情報提供、資格申請から開始し、最終的には設計・施行・維持の全過程を電子化

  • CALSについて

国土交通省のシステムがCALS/ECと呼ばれるのは、そこで使用されるデータ交換標準がCALS(Computer Aided Logistic Support → Computer-aided Acquisition & Life-cycle Support → Commerce At Light Speed)という国際標準に基づいているためです。公共事業の場合、受発注において使用される文書は設計図面などの複雑な技術的文書を含み、通常の電子取引よりも複雑な扱いを必要とします。また、調達された施設や設備は長期間にわたって使用され、そのライフサイクル全般にわたる管理を行わなくてはなりません。こうした用途にふさわしい技術標準としてCALSが選ばれたわけです。CALSは元々米国の国防調達に関連して開発されたものですが、現在では国防調達以外の分野にも普及し、日本では、公共事業発注への適用によって、その普及に大きく弾みがついています。

 

  • 電子調達システム導入の効果

問題:横須賀市の電子入札システム導入に関する新聞記事「談合排除へネット活用」(朝日2002/2/27)や国土交通省のパンフレット「CALS/EC」、「電子入札」を参照しながら、電子調達・電子入札導入の効果を箇条書きで挙げてください。

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5.電子納税

  

税務書類の場合

  • 「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電子帳簿保存法、1998年)

  • 備付け・保存義務のある帳簿書類を電子データあるいはCOMで代行できる

  • 事前に税務署長の承認が必要

  • その際、訂正・削除、追加入力等の履歴の保存、帳簿間の相互追跡の可能性確保、処理過程の説明資料の整備・保存、見読可能性の確保等の条件が審査される

  • 相手発行の証憑は現物保存の要あり

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6.登記制度

  • 商業登記制度

  • 「電気通信回線による登記情報の提供に関する法律」成立(1999年11月)

  • 2000年4月から部分実施、2004年には全ての不動産登記が閲覧可能にという計画だが・・・

  • ネット上で閲覧するためには法務省の指定法人「民亊法務協会」に利用者登録し、IDとパスワードを得る必要がある。
    民亊法務協会
    http://www.touki.or.jp

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7.電子投票

 

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8.住民基本台帳ネットワーク

  • 住民基本台帳法(99年4月成立)

  • 住民票番号(10桁)をキーにして、住民情報(住所、氏名、生年月日、性別)を自治体・中央省庁で共有

  • メリット:全国どこの市区町村でも自分の住民票をとることができる。16の中央省庁も児童扶養手当給付、恩給支給など92事務について本人確認のために四情報にアクセスできる。希望者にはICカードが配布される。

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9.共通課題

  • 電子文書の原本性確保

  • 申請者の認証

  • 手数料等の納付方法

  • 特許関係書類の場合

    • 「工業所有権に関する手続等の特例に関する法律」(1990年)

    • 電子化された申請、処分手続に対する「みなし」規定

    • 記名・押印に代わる措置

    • 「到達時点」の解釈

    • 見込額の予納

    • 指定情報処理機関

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10.印鑑から電子署名・電子認証へ:政府公開鍵インフラ(GPKI)の意義

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11.サイバー・ロー(Cyber Law)


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【演習問題】
  1. 横須賀市の「入札の広場」に掲示されている「」を読んで、電子入札の仕組みをあらわすフローチャートを書いてください。

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【脚注】

[1] 但し"when practicable"との表現もあるので、法律上"elimination"となっているが、例外のない電子化を求めているわけではないようだ。

[2] 米国の情報自由法(FOIA):合衆国憲法には言論・出版の自由を規定した修正第一条(1791年)があるものの、表現の受け手の権利のことは明確に意識されていなかった。第二次大戦後、政府の秘密主義に対する不満がジャーナリストの間で高まり、1950年にアメリカ新聞編集者協会が「情報の自由に関する委員会」を設置。この委託を受けたNew York Herald Tribune顧問弁護士のHarold Crossが1953年に「国民の知る権利−公共的な記録及び審議過程への法的アクセス」という本を出版。これが契機となって、連邦最高裁も言論の自由の保障の中に、情報受領権や情報収集権を含めるという立場を取るようになった。こうした中で、「情報自由法」(Freedom of Information Act)は、1966年の独立記念日( 7月4日)にジョンソン大統領が署名し、翌67年の独立記念日から施行。1974年にはPrivacy Act of 1974により政府保有の個人情報についての修正が行われた。

[3]


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【参考サイト】

  1. 電子政府関連リンク集

  2. アジアの電子政府

  3. 米国議会 e-Government project: An Experiment in Interactive Legislation

  4. 米国のE-Gov関連組織


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© Yoshiki Mikami 2002       last updated 2002/07/29