国際産業システム開発学大講座の概要

 

今日の産業活動は国境を越え、貿易、投資、技術移転、人材交流などのいずれの側面においてもグローバルに展開しています。同時に企業や国家の行動原則についても、金融、会計、経営、取引ルール、知的所有権、技術標準、安全規制など様々な分野で「グローバル・スタンダード」への適合が求められています。また、地球環境問題への対応など、地球規模の協調的な取組みを必要とする領域も拡大しています。

こうした状況は、企業経営、組織運営或いは開発途上地域における産業開発にとって、制約要因であると同時に機会でもあると捉える必要があります。グローバルな動向に敏感なものこそがチャンスを掴み、問題に正しく対応することができるのです。こうした考え方に立ち、以下のような領域に関して研究を進めています。

 

産業活動と地球環境問題

1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連地球環境開発会議は、「アジェンダ21」という行動計画を採択しました。ここには温暖化ガスによる気候変動問題への対応、生物資源の多様性の保全と活用、有害化学物質の管理、廃棄物のリサイクル問題など、地球規模の対応を必要とするあらゆる課題と対応の基本方向が示されています。現代の企業活動はこうした環境問題への戦略なくして成立しません。グローバルな協調的対応が必要ですが、一面では国際的な利害が極めて先鋭に衝突する課題でもあり、個々の問題をめぐる利害対立の構図を正しく見通すことが、企業活動にとっても、また国家的な戦略にとっても必要です。

本講座では、気候変動枠組条約、生物多様性条約等を中心とする世界的な枠組と、環境基本法、省エネルギー法、廃棄物処理法、リサイクル法等の日本国内における諸規制の動向を分析するとともに、先進的な企業の対応事例などを追跡し、対応策の体系化を試みています。

2 産業技術と規格

数あるグローバル・スタンダードの中でも、技術標準の問題は当然のことながら産業技術に最も密接に関係しています。とりわけ、ウルグアイ・ラウンド交渉で達成されたTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)は、加盟各国に対して国内規格を国際規格に合致するよう求めています。他方で技術革新の速度の著しく早い情報技術分野などでは、各企業は企業戦略そのものとも言える規格戦略にしのぎを削っています。いち早くデファクト・スタンダードの地位を獲得したものがグローバルな勝利者となる世界です。一方デジューレ・スタンダードの世界でも、ISO9000シリーズ(品質管理)、同14000シリーズ(環境管理)等、従来の技術規格の概念を超える、経営マネージメント規格とも言うべき新しいジャンルの標準が急速に普及しています。

本講座では、TBT協定やISO、IEC等の国際標準化組織の動きを分析するとともに、標準化プロセスを企業戦略の側面からも研究しています。

3 デジタル・エコノミー

90年代の世界経済を特徴づけるものの一つがインターネットを中心とする情報通信技術の多様な展開です。この流れに的確に対応した米国は「ニューエコノミー」とまでいわれる高成長を続けています。クリントン政権はインターネットを情報通信政策の中心に据え、来世紀をデジタル・エコノミーの時代と特徴づけています。しかし、この新しい経済システムに対応していくためには、電子的な取引を安全に行うためのセキュリティーの確保、知的所有権の保護、プライバシーの保護、規制の緩和など様々な制度的準備が必要です。それは国家レベルで対応すべき事項もあれば、企業がそれぞれに対応していくべき課題もあります。

本講座では、デジタル・エコノミーの実現に必要な問題の所在と具体的な解決策の在り方をグローバルな文脈から研究しています。

4 産業技術と知的財産権

先端的な技術はいずれも知的財産権の固まりです。またTBT協定と同様、ウルグアイ・ラウンド交渉ではTRIPS協定(知的所有権の貿易的側面に関する協定)が成立し、権利保護の在り方については国際的な調和が一層進められることになりました。知的所有権は、規格戦略、情報化、バイオテクノロジー等、産業技術に関する他の領域においても中心的役割を果たす存在です。

本講座では、特許、著作権を中心とするこれらの権利保護制度の動向を分析するとともに、その活用戦略について分析、研究しています。