台湾の科学技術政策

三上喜貴@長岡技術科学大学

1 R&D活動の概況[]

(1) 歴史的概観

台湾における近代は清朝植民地下での「洋務運動」に始まる。清朝政府において近代化を押し進めようとした「洋務派官僚」李鴻章の部下達(劉銘伝ら)が1886年に台湾巡撫として着任し、電信施設の整備、電灯の架設、近代的な教育施設の整備、西洋医ハンセンの招聘による官医局の創設など西洋近代科学技術導入のための諸改革を行った。しかし彼等による改革は究めて短期間に終わり、日清戦争の結果締結された「下関条約」(1895年)により台湾は日本に割譲され、日本の植民地としての50年間にわたる歴史が始まった。

日本の統治下ではこうした改革の土台の上に、台湾高等学校の設立とこれに続く台北帝国大学の設立などの高等教育体制の整備が進められ、また台湾海洋観測所の設置(1931年)、南方資源科学研究所の設置(1943年)など植民地資源の把握、分析のため研究施設が置かれたが、皇民教育の強制などに伴う否定的な影響も大きかった。

第2次大戦後の国共分裂によって台湾に逃れた「中華民国」政府の下で、台湾は産業政策面では外国投資の積極的受け入れを図って低賃金を活かした繊維、機械等の輸出加工業を発展させるとともに、その原料供給源となる一貫製鉄(中国鉄鋼公司)や石油化学(中国石油公司)の様な戦略的な産業部門の自前での育成を目指した。こうした経済政策は極めて成功し、台湾経済が高度成長をとげる過程でこれらの産業技術の定着が進んだ。一方科学研究の面では第2次大戦中に戦火を逃れて移動を続けた中国の各大学や中国科学院メンバーの一部が台湾に移り、そこに本土にあった時代の科学者社会を再現した。最近まで台湾中央科学院のトップにあった呉大猷などはその中心的人物であった[]。そして1969年に設立された国家科学委員会は長期的な科学技術発展計画の下で産業技術の開発能力強化を進め、パソコン、半導体のような先端分野においても国際的な競争力を獲得するに至った。

(2) R&D支出の水準と配分

過去10年間に台湾のR&D活動は5倍以上拡大し、R&D支出の対GDP比は1985年当時の1.03から現在(1994年)の1.80へと上昇した。R&D支出の絶対額は1,147NT$43.7億米$)であり、米国の40分の1、日本の25分の1、韓国の半分強といった規模に該る。R&Dの内容も、かつて80年代の末までは国防研究の占める割合も高かったが、現在では先端産業分野を中心とする内容となっており、「新竹科学工業園区」の劇的な発展に象徴される大きな成果を収めている。

支出主体から見ると国公立研究機関及び工業技術研究院(ITRI : Industrial Technology Research Institute)に代表される財団法人研究機関が全体の27%を占め、企業が57%を占める。残りの15%が大学によるR&Dである。資金の負担源としては官:民がほぼ均等の比率となっているが、政府は中長期的な目標として民間の比率を6割以上に高めることを目指している。

表1 R&D資金の支出と負担のフロー(1994年)  単位:百万NT$

負担\支出主体

研究機構

大学

企業

負担額計

政府

28,743

16,839

2,794

48,376

公営企業

319

22

6,569

6,910

民間企業

1,224

179

56,301

57,704

財団法人

1,145

270

116

1,531

外国

17

3

141

161

支出額計

31,448

17,313

65,921

114,682

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995)、表1-4-2

 

(3) R&D人材の雇用構造

R&D従事者の総数は約9万人であり、対労働力人口1万人当りの比率では102人となる。その6割強は企業に属し、試験研究機関と大学に各2割弱が所属する。

 

表2 R&D従事者の雇用構造(1994年)   単位:人

部門

試験研究機関

大学

企業

合計

研究従事者

17,046

16,321

58,970

92,337

研究者

11,036

12,728

31,641

55,405

 内博士

1,979

6,290

803

9,072

 内修士

4,269

3,403

7,119

14,791

 内学士

2,650

2,484

11,687

16,821

 その他

2,138

551

12,032

14,721

技術・技能職

3,229

1,902

18,936

24,067

支援業務従事者

2,781

551

12,032

12,865

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995

 

(4) 研究分野と段階

国全体のR&D支出額で見ると、研究分野の72%は工学分野で占められ、農業分野の比率は9%に低下している。

他方研究段階別に見ると、全体の約半分が開発研究であり、応用、基礎研究はそれぞれ35%15%を占める。台湾の大学はアカデミズムへの傾斜が著しいといわれ、数字の上でも基礎研究比率が6割近くに達している反面、開発研究比率はわずか6%と極めて低い。これに対して企業は開発研究が7割近くを占め、基礎研究は2%に過ぎない。最近における台湾の半導体・コンピュータ企業の成長は著しいが、依然としてその企業規模は小さく、中長期的な視点から基礎研究に取り組む余裕はないといわれている。こうした二極分化の中で次世代技術創出のための中長期的研究開発に当たる中核となっているのが工業技術研究院(ITRI)等の財団法人研究機関である。

 


表3 研究分野別のR&D支出(1994年)   単位:百万NT$

部門

試験研究機関

大学

企業

合計

農業

6,543(20.8%)

1,987(11.5%)

1,907(  2.9%)

10,437(  9.1%)

医学

2,670(  8.5%)

3,007(17.4%)

1,172(  1.8%)

6,849(  6.0%)

自然科学

3,348(10.6%)

3,135(18.1%)

3,047(  4.6%)

9,530(  8.3%)

工学

16,801(53.4%)

6,886(39.8%)

59,331(90.0%)

83,018(72.4%)

人文科学

1,118(  3.6%)

195(  1.1%)

140(  0.2%)

1,453(  1.3%)

社会科学

968(  3.1%)

2,103(12.1%)

324(  0.5%)

3,395(  3.0%)

合計

31,448(100%)

17,313(100%)

65,921(100%)

114,682(100%)

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995)、表1-9-2

 

表4 研究段階別のR&D支出(1994年)   単位:百万NT$

研究段階

試験研究機関

大学

企業

合計

基礎研究

5,922(18.8%)

9,792(56.6%)

1,424(  2.2%)

17.138(14.9%)

応用研究

14,669(46.6%)

6,443(37.2%)

19,272(29.2%)

40,384(35.2%)

開発研究

10,857(34.5%)

1,078(6.2%)

45,225(68.6%)

57,160(49.8%)

合計

31,448(100%)

17,313(100%)

65,921(100%)

114,682(100%)

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995)、表1-10-2

 


2 科学技術行政機構と政府のR&D活動

(1) 科学技術行政機構の概要

◯国家科学委員会

科学技術に関する政府の機構は、大きく分けて「行政機構」、実施機関たる「実行機構」(研究機関)および「計画・評価機構」に分けられる。行政機構としては、行政院(内閣に相当)のもとに国家科学委員会(1969年設置)がおかれ、国家的な科学技術計画の策定にあたっている。現在中長期の科学技術計画の基礎となっているのは、91年に召集された「第四次全国科技会議」のもとで策定された「国家科技発展12年計画(1991-2002年)」及び「国家科技発展6年計画(1991-1996年)」である。この両計画には下表のような数値的な目標が示されている。ここで注目されるのは、R&D支出や人材といった「投入指標」に加えて、「論文引用国順位」「特許取得件数」「技術集約製品の割合」といった「成果指標」が含まれていることである。毎年の「科学技術年鑑」を見ても各分野毎にこれらの「投入指標」と「成果指標」が詳しくまとめられており、研究開発成果のモニター・評価のメカニズムが機能していることを窺わせる。科学技術に関する国としての政策的関与の面で、台湾はおそらくアジア各国の中で最も組織的、体系的な計画、予算配分、目標管理が行われている国であろう。

国家科技委員会はこうした計画の立案のみならず、主として科学研究の領域における予算の配分、共同利用施設の運営にもあたっている。

 

表5a 国家科技発展中長期計画における段階別数値目標

項目

1991

1992

1996

2002

R&D支出の対GNP比(%)

1.7

1.79

2.2

2.8

民間:政府のR&D比率

48:52:00

48:52:00

60:40:00

60:40

企業R&D支出/売上高(%)

1

1

2

3

R&D従事者数/人口(人/万人)

23

23

25

35

科学論文引用国順位(SCI

26

24

15

10位以内

工学論文引用国順位(EI

13

13

10

10位以内

米国での特許取得国順位

10

9

8

8位以内

技術集積製品/製造業比率(%)

29

29

35

41

(出典)「中華民国科学技術年鑑(民国83年(西暦1994年))」p.14

(注)SCI Scientific Citation IndexEI Engineering Index を示す。

 

◯経済部:一方産業技術分野において重要な役割を果たしているのが経済部である。経済部は公営企業を所管するとともに、「技術処」を通じて戦略的な産業技術の開発計画を実施している。経済部の科学技術予算の3分の1程度は公営企業のR&D活動に当てられており、残りが財団法人研究機関を通じたR&Dプロジェクトに当てられている。

◯国防部:大陸との緊張関係に置かれる台湾では軍事費の負担が大きく、中国造船、航空工業開発センター(AIDC)などの軍需産業も有する。特に米中和解を受けて1982年にレーガン政権が台湾への兵器売却を事実上停止して以降はIDFと呼ばれる国産戦闘機の自主開発など、独力による兵器開発まで行ってきた。こうした中で90年代初頭まで科学技術予算の半分近くは国防部が占めていたが、90年代に入って国防部の科学技術予算はむしろ減少傾向にあり、今日では約2割程度に低下した。国防科学技術研究の中心となるのは中華民国建国の父孫文(孫中山)の名を冠した中山科学院である。中山科学院でも研究内容の民需転換が進められているという。

◯中央科学院:基礎科学に関する中心的な研究機関。呉大猷(Wu Ta-you)が設立以来の永きにわたって院長の座にあったが93年にリタイアし、後任に86年にノーベル化学賞を受賞した李遠哲(Lee Yuan-tseh)が着任した。彼には、同じく学者の出身である李登輝総統が後任に指名するとの噂もあった[]

 

表5b 省庁別の科学技術予算と傘下研究所     単位:百万NT$

省庁名

1994

傘下の国立研究所等

中央科学院

2,996

総統府直属の機関。傘下に自然科学、人文科学、社会科学各分野の19研究所を有する。

国防部

7,936

中山科学院

経済部

11,969

直轄研究所としては中央地質調査所を持つ。この他、産業技術分野にITRI等多数の財団法人研究機関を所管する。

交通部

332

運輸研究所、電信研究所等

国家科学委員会

11,392

シンクロトロン設備、スーパー・コンピューティング・センター或いは実験動物の飼育設備といった大型の研究施設を核とする幾つかの直轄研究所を有する。

原子能委員会

2,318

核能研究所、放射性特処理物料管理処等

農業委員会

2,318

 

教育部

822

 

衛生署

521

予防医学研究所等

環境保護署

97

環境検験所

政府合計

40,971

(国防を除くと33,035

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995

 

(2) 国立研究所

◯中央科学院(Academia Sinica):戦前の中国科学院時代からの歴史を有する数学、物理、化学などの各分野毎の研究所を持つ。いずれも研究員数が2030人という小規模な研究所である。1980年代の後半以降米国からの帰国研究者を中心に分子生物学研究所(IMB : Institute of Molecular Biology)、生物医学研究所(IBMS : Institute of Biomedical Sciences)等の研究所が新設されている。

◯国家科学委員会:共同利用型の研究施設を幾つか有している。新竹にはシンクロトロン放射光施設(SRRC : Synchrotron Radiation Research Center)を建設した。

この他、原子能委員会、経済部、交通部、衛生署、国防部、内政部等の各部の下に多数の国立研究所がある(前表参照)。

また、台湾では行政院の下に、主として民生関係を司る「台湾省政府」を置くと言う二重構造となっている。行政院が「中華民国」としての国家行政を担当し、台湾省政府が「中華民国」の一地方たる「台湾省」に関する地方行政を担当する、との役割分担がなされているわけである。この台湾省政府にも以下のような研究機関がある。

◯民生庁:手工芸研究所

◯財政庁:酒類試験所、煙草試験所

◯交通処:港湾技術研究所等

◯農林庁:農業試験所、林業試験所、水産試験所、畜産試験所等多数

◯衛生処:公共衛生研究所等

◯環境保護処:各地に環境保護センター

 

(3) 財団法人研究機関

以上のような公立研究機関の他に多数の財団法人研究機関がある。最も有名なものはITRIの略称で広く知られている工業技術研究院であるが、この他にも中国生産性センター、中国紡績工業研究センター等、合計56機関がある。これらの財団法人研究機関も、R&Dに関する研究資金の財源という観点からはその多くを政府に仰いでいる。しかし公立研究機関が自然科学の専門分野に対応した基礎研究機関であるのに対して、財団法人研究機関は産業技術に直結した研究を対象としている。

 

表6a 研究機構の内訳

農業

医学

自然科学

工学

人文科学

社会科学

合計

公立研究機構

5,890

2,214

2,242

1,918

975

382

財団法人

653

310

1,106

14,883

143

586

私立研究機構

0

236

0

0

0

0

合計

6,534

2,670

3,348

16,801

1,118

968

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995

 

表6b 研究機関のR&D活動      単位:百万NT$

公立研究機関

私立研究機関

財団法人

研究機関合計

R&D支出合計

13,531

236

17,681

31,448

【段階別内訳】

 

 

 

 基礎

5,248

208

466

5,922

 応用

6,900

28

7,741

14,669

 技術開発

1,383

-

9,474

10,857

R&Dの財源構成】

 

 

 

 政府

13,402

103

15,238

28,743

 公営事業

33

0

286

319

 民営事業

42

0

1,182

1,224

 財団法人

53

133

959

1,145

 海外

1

0

16

17

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995)、表3-2、表1-4-2


3 高等教育の体制と大学のR&D活動

(1) 高等教育の体制

台湾には日本による割譲まで高等教育機関は存在しなかった。日本の占領時代には、植民地経営に必要な近代医療、農業、商工業等の各分野での専門家育成のために、医学、農林、商業、工業の各専門学校が設立され、また1928年には京城に続く第5番目の帝国大学として「台北帝国大学」が設立された。これらの教育機関では「日台共学」が唱えられたものの、医学校を除き実際には日本人学生が8割以上を占めたという[]。しかしその教育水準は高かったといわれ、また熱帯病、アジアの地域研究等日本の植民地経営上の重点分野においては政府からの研究委託費などもふんだんに与えられ、高い水準の研究も行われていた。戦後、これらの高等教育機関は校舎や教授陣の一部を継承し、また高等学校は大学へと昇格し、国立台湾大学(旧台北帝国大学)、台湾師範大学(旧台北高等学校)、成功大学(旧台南工業専門学校)等となった。

一方清華大学、交通大学、中央大学等は第二次大戦中に中国本土から「移動」してきた当時の「中華民国」の大学群であり、その名称と教授陣の一部を継承して台湾の大学となったものである。ちなみに大陸では、その後清華大学は北京に、交通大学は北京、上海、成都、西安の各地に再建されている。これらのうち、清華、交通の両大学は産業技術に関するR&D活動の面で重要な役割を果たしている。両校が新竹科学工業園区に建設されたことは、その後の新竹地区の発展の基礎となるものであった。

 

表7 主要な高等教育機関一覧(設立年順)

大学名

設立年

所在地

教官数

学生数

国立台湾大学

1928

台北

3,713

22,513

国立成功大学

1931

台南

1,167

13,841

国立台湾師範大学

1946

台北

819

6,667

台湾海洋大学

1953

基隆

378

4,401

国立清華大学※

1956

新竹科学工業園区

482

5,537

国立交通大学※

1958

新竹科学工業園区

415

4,896

国立中興大学

1961

台中

1,298

16,600

中国文化大学

1962

台北

1,839

21,135

国立中央大学※

1968

中歴

361

4,126

台湾工科大学

1974

台北

292

5,377

(注)※印は本土から移動してきた大学。

(出典)The World of Learning 1996


4 企業のR&D活動と政府の振興策

(1) 企業のR&D活動

台湾における企業のR&D活動は支出金額で国全体の57%1994年)を占め、R&D従事者総数の64%(同)を擁する。過去の推移を見ると、企業のR&D支出が急激な増加を示し始めたのは80年代末以降である。業種別内訳でみると全体の半分を電気・電子分野が占め、これに続くのが化学、輸送機械、ゴム・プラスティク等の分野である。

台湾ではいくつかの産業分野で国営企業が存在する。中国石油、中国石油化学工業開発、台湾肥料、中国鋼鉄、中国造船、台湾電力等である。これらの国営企業によるR&D活動も石油、金属、エレクトロニクス分野で活発である。

 

表8 産業別のR&D活動(1994年)      単位:10億ウォン

産業分類

公営企業

民営企業

合計

技術輸入額

食品・飲料・煙草

756

2,035

2,791

738

繊維・皮革・家具

1

1,881

1,882

493

紙・紙製品・印刷

4

287

291

174

化学工業

84

5,902

5,986

1,583

石油工業

1,097

63

1,160

25

ゴム・プラスティック

7

4,652

4,659

253

金属・同製品

980

2,324

3,304

632

機械工業

10

3,232

3,242

662

電気・電子機械

3,415

28,220

31,635

6,300

輸送機械

67

5,529

5,596

2,307

精密機械

-

984

984

238

その他製造業

-

745

745

85

非製造業

50

73

123

1

情報サービス

-

2,152

2,152

n.a.

技術サービス

-

94

94

n.a.

合計

6,421

57,131

63,552

13,685

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995

 

(2) 新竹科学技術園区

台湾における産業技術政策の象徴的な成果が「新竹科学工業園区」(Hsinchu Science -based Industrial Park)におけるハイテク産業の発展である。1994年現在、同園区には半導体、電子計算機、通信機器を中心に165社の企業が立地し、その総売上高は1,778NT$(約67US$)に達した。売上高で見ればそれは台湾全体の製造業生産高の2.8%を占めるに過ぎないが、R&D支出額で見ると全企業のR&D12%が新竹園区内で行われたことになる。またエレクトロニクス分野だけに限れば、全国の約4分の1が新竹に集中していることになる。

人材面でも同様であり、園区内の総雇用者数は3万人余、全国の研究者の13%に相当する4,000人余がこの園区内で働いている。これらの研究者は園区内に立地する国立交通大学、清華大学や工業技術研究院(ITRI)との間での流動性が極めて高く、また米国などへ留学して帰国した研究者が多数集積している。

 

表9a 新竹科学技術園区所在企業のR&D活動

業種

売上高

R&D支出

同比率

従業員数

R&D従事者

同比率

 

(NT$)

(百万NT$)

()

()

()

()

集積回路

840

4,606

5.5

16,313

2,420

14.8

計算機・周端

719

1,985

2.8

9,649

2,671

27.7

通信機器

147

979

6.6

3,943

708

18

オプトエレクトロニクス

47

437

9.3

2,384

465

19.5

精密機器

19

126

6.5

1,000

189

18.9

生物工学

4

71

19.1

249

96

38.6

合計

1,778

8,204

4.6

33,538

6,549

19.5

(出典)中華民国科学技術統計要覧民国84年版(1995)、表7-3、表7-4、表7-8、表7-7-2

 

依然として多くの外国技術が導入されているものの、外国への技術支払額は年々減少して94年では12.7億ドルである。他方技術輸出は増加しており、94年の輸出額は8億ドルに達した。半導体分野では既に輸出額が輸入額を上回っている。特許の取得件数も徐々に増加しつつあり、93年には全国ベースでの取得件数の25%に相当する143件が園区内の台湾企業に与えられた。

しかし他方、例えば米国からの帰国研究者がその子弟を通わせるインターナショナル・スクールがない等、園区で生活する研究者のための生活関連インフラの整備については遅れが指摘されており、こうした理由で母国を再び去る者も少なくないという。

 

表9b 新竹科学技術園区所在企業の技術貿易と特許取得  単位:百万NT$、件

業種

自国内技術

購入額

外国技術

輸入額

技術輸出額

国内企業

特許取得

外国企業

特許取得

集積回路

86

252

668

92

40

計算機・周端

107

461

59

43

24

通信機器

13

343

16

3

0

オプトエレクトロニクス

26

64

0

4

5

精密機器

13

42

50

0

0

生物工学

11

108

0

1

0

合計

256

1,270

793

143

69

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995)、表7-13-2及び表7-15

 表9c 新竹科学技術園区の「十大製品」      単位:億NT$

製品名

生産額

販売額

国内向販売

輸出額

輸出比率

Wafer IC

266

262

119

153

54.4

MOS RAM

141

138

17

120

87.3

Notebook PC

127

123

8

115

93.5

IC Packing

117

127

82

46

25.9

Main Board

89

91

82

46

25.9

その他電子部品

84

86

24

62

72.2

Desktop PC

66

64

6

58

90.3

MOS RAM

57

57

19

38

66.4

MOS SRAM

52

53

3

20

38.9

交換機

51

48

40

8

16.9

(出典)「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995)、表7-19

 

【参考文献】

行政院国家科学委員会編、「中華民国科学技術統計要覧」民国84年版(1995

行政院国家科学委員会編、「中華民国科学技術年鑑」民国83年版、199512

戴國■著、「台湾−人物・歴史・心性−」、岩波新書、1988

呉文星/陳舜芬等著「台湾における高等教育の発展」、P.G.アルトバック/V.セルバラトナム編『アジアの大学』所収、玉川大学出版部、1993

 



[] R&D活動調査について:台湾においては、R&D活動に関する全国的な調査は1980年の行政院科学技術顧問会議建議を受けて開始され、1981年から1986年までは台湾大学慶齢工業研究センターによって実施されてきた。民間企業に関する調査は1988年から開始され、これは1994年まで中国生産力センターが担当してきた。現在では全て行政院国家科学委員会の手によって行われており、「中華民国全国科技動態調査(The National Science and Technology Activities Survey)と呼ばれている。毎年の調査結果は科学技術統計要覧」として公表されている。

[] 呉大猷(Wu Tayou)は「台湾における自然科学研究と教育の基礎を確立した」功績により、1984年に「アジアのノーベル賞」ともいわれる「マグサイサイ国際賞」を受賞した。

[] 中国人としては4人目だが、台湾生まれとしては初めてのノーベル賞受賞者。

[] この項の記述は呉文星/陳瞬等著「台湾における高等教育の発展」、『アジアの大学』所収によった。 


本稿はJETROの発行する「JETRO技術情報」(JETRO Technology Bulletin)、383号、1998年2月に掲載された筆者の原稿を、JETROの許可を得て再掲したものです。再掲にあたって、小見出しの追加などの修正を行っています。引用の際には、JETRO技術情報, 383, pp.1-36, 1998.と記載してください。


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